トップ営業は何をしているのか

多くの営業組織には、必ず「トップ営業」がいます。他の営業より圧倒的に売る。難しい案件をまとめる。大きな契約を成立させる。

こうした人はしばしば、「営業力が高い」「経験が豊富」「交渉が上手い」と説明されます。もちろんそれも一部は正しいでしょう。しかし実際に彼らがやっていることをよく見ると、少し違う姿が見えてきます。

トップ営業は、営業だけをしていない

トップ営業は、実は営業以外のことを大量にやっています。顧客の問題を再定義し、社内の関係者を調整し、提案ストーリーを作り直し、顧客の意思決定プロセスを整理し、導入の段取りを設計する。つまりトップ営業は、売っているだけではありません。案件の構造を整えています。

本来、仕組みがやるはずの仕事

ここで重要なのは、これらの仕事の多くは、本来営業個人の仕事ではないということです。顧客の問題定義、提案ストーリー、社内連携、導入プロセス。これらは本来、会社の仕組みとして整備されているはずのものです。しかし実際には、そうなっていないことが多い。そこでトップ営業は、仕組みの隙間を埋める役割を担うことになります。

トップ営業がやっていること

トップ営業がやっている仕事を整理すると、次の4つに分かれます。

1. 顧客の問題構造を整理する

顧客は最初から問題を明確に理解しているわけではありません。トップ営業は、顧客の状況を整理し、本当の問題を定義し、解決のストーリーを作ります。これは単なる営業ではなく、問題構造の設計です。

2. 社内の接続を整える

多くの案件では、技術、法務、サポート、経理など複数の部門が関わります。トップ営業はこれらの関係者をつなぎ、案件が進むように調整します。これは組織接続の設計です。

3. 顧客の意思決定を設計する

BtoB 営業では、「誰が決めるのか」「どの順番で検討するのか」「何が障壁になるのか」を理解する必要があります。トップ営業は顧客の意思決定プロセスを整理し、案件が進む道筋を作ります。これは意思決定構造の設計です。

4. 導入の不安を解消する

顧客が最後に迷うのは「導入して大丈夫か」という点です。トップ営業は、導入方法、運用方法、社内調整を説明し、リスクを下げます。これは導入構造の設計です。

トップ営業は、仕組みの隙間を埋めている

ここまで見ると、あることに気づきます。トップ営業がやっていることは、営業能力というより、仕組みの隙間を埋めることです。問題構造、社内接続、意思決定、導入プロセス。本来仕組みが担うべき部分を、トップ営業が個人の能力で埋めています。

なぜ20%の営業が80%を売るのか

多くの営業組織では、20%の営業が80%を売ると言われます。これは単なる能力差ではありません。実際には、仕組みの隙間を埋める力の差です。トップ営業は隙間を埋められる。他の営業はそれができない。だから売上に差が出ます。

これは、他の営業が劣っているという話ではありません。仕組みが整っていれば必要のない力を、トップ営業が個人で抱えている、という話です。

構造が整うと何が起きるのか

もし構造が整うと、どうなるでしょうか。問題定義が共有され、提案ストーリーが整い、社内接続がスムーズになり、導入プロセスが明確になります。すると、普通の営業でも、同じように案件を進められるようになります。つまり売上は、個人の能力ではなく、仕組みの力で生まれるようになります。

これは、トップ営業が不要になるという話ではありません。トップ営業の力が、隙間を埋めることから、より高度な仕事に向けられるようになる、ということです。

営業を変える前に、構造を見る

売れないとき、多くの会社は、営業教育、KPI 管理、営業ツールの強化に向かいます。しかし本当に問題なのは、営業ではなく構造であることが少なくありません。

営業は、市場・製品・顧客・組織の接続点にいるため、構造の摩擦が最も早く現れる場所です。「売りにくい」「説明しづらい」「顧客がピンとこない」といった営業の言葉は、構造の警報です。

仕組みを見るという選択

トップ営業の能力を強化することは重要です。しかし同時に、なぜトップ営業が必要なのかを見ることも重要です。もしトップ営業が仕組みの隙間を埋めているのだとしたら、本当に必要なのは営業教育ではなく、その成り立ちの理解かもしれません。
ソラリストは、営業の良し悪しを評価しません。その売上が、仕組みによって生まれているのか、トップ営業が隙間を埋めることで成立しているのかを、分けて観測します。