表面上は、順調に見えていた
売上は安定しており、主要なプロジェクトも継続していました。大きな問題はなく、組織としては十分に機能しているように見えました。
しかし、内部では別の状態があった
特定の人に判断が集中し、重要な意思決定ほど、限られた個人に集まる傾向がありました。部門間の調整は、公式なプロセスではなく、個人の関係性に依存していました。制度でカバーできない部分を、人がその都度、埋めることで成立していたのです。
これ自体は、自然なことです。立ち上げや変化の局面では、人が隙間を埋めることは欠かせません。問題は、人が埋めていること自体ではなく、それがどれだけの割合を占めているのかが、見えていなかったことです。
何を成果に置くか
このケースで成果に置いたのは、特定の部門の数字ではなく、事業が続いていることそのものでした。
事業の継続という成果は、どこか一つの部門で成立しているのではありません。意思決定、部門間の連携、プロセス、評価。組織全体の条件によって成立しています。
何を成果に置くかで、見るべき範囲が決まります。事業の継続を成果に置けば、その成立条件は、組織全体に広がります。
成果の内訳が見えていなかった
例えば、成果が 10 出ている状態があったとします。外からは、同じ 10 に見えます。しかし、その内訳は違います。
- 仕組みが機能して、生み出している力
- 仕組みはあるが、形だけになっている部分
- 人が、その隙間を埋めて成立させている力
- 外部環境に、助けられている部分
この組織では、仕組みが機能している部分は一部で、多くを、形だけになった仕組みと、それを埋める人の力が占めていました。同じ 10 でも、再現性も、人が変わったときの安定性も、まったく違います。
構造条件として見ると
役割、評価、意思決定の仕組みは、存在していました。しかし、以下のようなズレが生じていました。
- 責任と、意思決定の範囲が曖昧
- 部門間の、前提が揃っていない
- 定められたプロセスと、実際の運用が一致していない
仕組みはある。しかし、意味を持って機能していないため、形だけになっていました。形だけになった仕組みの隙間を、人が埋めていたのです。
つまり、人が埋めていたのは、人の問題ではなく、仕組みが形骸化していたことの結果でした。補正の量は、その組織が、どれだけ形骸化した仕組みを抱えているかの目安でもあります。
観測によって明らかになったこと
このケースでは、以下の状態が確認されました。
- 意味条件が、部分的にしか成立していない
- 構造損失が、継続的に発生している
- 形だけになった仕組みを、人が隙間を埋めて維持している
挙動モード:緩慢消耗(Gradual Drain)
このケースは、緩慢消耗(Gradual Drain)の状態にありました。
大きな問題は表面化しませんが、条件のズレによって、基礎的なリソースが、静かに削られ続けている状態です。遅延も、トラブルもない。だからこそ、問題として扱われませんでした。
なぜ気づきにくいのか
この状態でも、組織は一見「機能」しています。そのため、問題があるとは認識されず、むしろ「うまく回っている」と受け取られがちです。
しかし実際には、その多くを、形だけになった仕組みと、それを埋める人の力が支えています。これは、誰かが悪いという話ではありません。成果の中に、その成り立ちが隠れているために、見えないだけです。
構造を観測するという選択
Soralistは、成果ではなく、その内側の条件を観測します。
仕組みが機能している部分、形だけになっている部分、人が隙間を埋めている部分を分けて捉えることで、成果の成り立ちを明らかにします。この成り立ちは、成果の中に隠れているため、放っておくと、問題として扱われることはありません。
